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ユニバーサルデザインフォント(UDフォント)とは?おすすめの書体や選び方を徹底解説

更新日:2026.10.13

公開日:

「ユニバーサルデザインフォント(UDフォント)」とは、視力や年齢、環境を問わず、誰にでも読みやすいよう設計された書体のことです。自治体の広報物、教科書、ビジネス資料、コーポレートサイトに至るまで、UDフォントの採用は広がっています。

屋外の明るい場所でスマホの文字が霞んで見えたり、会議室の後ろの席でスライドの文字を目で追えなかったり。同じような経験は、誰にでもあるはずです。書かれている内容は同じはずなのに、相手の年齢、視力、その場の明るさによって「読める」「読めない」が分かれてしまう。 この、「届いているようで、実は届いていない」という現実を、デザインで解決するためのアプローチの一つが、「UDフォント」です。この記事では、UDフォントの基礎知識から、普通のフォントとの違い、代表的な書体の特徴、Web・印刷・スライドといった用途別の具体的な選び方まで、明日から実務に活かせる形でお伝えします。「種類が多すぎて選びきれない」「ブランドの世界観と合わない気がする」とお悩みの方にぜひご一読いただきたい内容です。

この記事で分かること

  • なぜ今、UDフォントが日本のビジネス現場で求められているのか(法制度・高齢化・モバイル中心化)
  • 普通のフォントとUDフォントの本質的な違い(視認性・判読性・可読性の3軸)
  • 用途別(Web本文/スライド/パンフ/教育資料)の具体的なおすすめ書体と、その選択理由
  • 主要UDフォントの開発元・搭載環境・ライセンスを一覧で比較できる早見表
  • UDフォントの効果を最大化する行間・コントラスト・文字サイズの実数値
  • UDフォントを「使うべき場所」と「使わないほうがよい場所」の見極め方

なぜ今、UDフォントが必要とされているのか

UDフォントが注目される背景には、主に3つの社会的変化があります。

一つ目は、法制度の変化です。2024年4月の改正障害者差別解消法の施行により、民間企業を含めたすべての事業者に障害のある方への合理的配慮が「法的義務」になりました(参考:事業者による障害のある人への「合理的配慮の提供」が義務化|政府広報オンライン)。合理的配慮とは、障害のある方から社会生活の中にあるバリアを取り除いてほしいという意思表示があった場合に、負担が重すぎない範囲で対応を行うことです。ウェブサイトにおいては、情報にアクセスしやすく、利用しやすい形で届けるよう工夫することが、合理的配慮につながる取り組みの一つといえます。

二つ目は、急速な高齢化です。日本の高齢化率は29.3%に達しており(出典:『令和7年版高齢社会白書』高齢化の状況より|内閣府)、老眼や白内障などによる「細い文字の見えづらさ」を抱える読者は確実に増えています。そのため、文字の形や線の太さ、余白などを工夫し、読みづらさを軽減することが大切です。

そして三つ目は、モバイル中心の閲覧環境への変化です。スマートフォンが普及した現代、強い直射日光の下や移動中の揺れる車内など、さまざまな「環境ノイズ」の中で自社の情報が読まれています。画面に光が反射する、短時間で情報を判断しなければならないといった状況では、文字の判別しやすさが重要です。

このような社会的変化の中で、誰にとっても読みやすい情報設計を実現するための手段として、UDフォントが注目されています。自社のWebサイトや資料などにUDフォントを取り入れることで、情報を届けやすくなるだけでなく、利用者に配慮した企業姿勢を伝えることにもつながります。

ユニバーサルデザインとUDフォントの基礎知識

バリアフリーとユニバーサルデザインの違いとは?

「ユニバーサルデザイン」と混同されやすいのが「バリアフリー」です。

バリアフリーは、もともと存在する障壁(バリア)を、あとから取り除く考え方です。階段しかなかった建物にスロープを後付けする、紙の資料を高齢の方向けに大きく印刷し直す、といった対応がこれにあたります。

一方のユニバーサルデザインは、最初からできるだけ多くの人が使えるよう設計する考え方です。スロープを後付けするのではなく、出入口そのものを段差のない設計にする。資料を作り直すのではなく、最初から誰にとっても読みやすい書体を使用する。設計段階から幅広い利用者を想定する点が特徴です。

UDフォントが目指しているのも、まさにこの「あとから直さなくていい設計」です。視力の弱い方、暗い場所で資料を見る方など、誰かを特別扱いするのではなく、最初からできるだけ多くの人が読みやすい状態をつくることが、UDフォントの基本的な考え方です。

UDフォントはなぜ生まれた?

UDフォントは、文字の「見えにくさ」や「読み間違い」を減らし、より多くの人に正確に情報を届けるために開発されました。特に、家電製品の表示や説明書、案内表示、教材、医療・金融関連の書類など、文字の誤読がトラブルにつながりやすい場面で、読みやすい書体の必要性が高まりました。

読み間違いが起こりやすい文字には、数字の「0(ゼロ)」とアルファベットの「O(オー)」、「1(いち)」と「l(小文字エル)」と「I(大文字アイ)」、ひらがなの「ぱ」と「ば」などがあります。UDフォントでは、こうした文字の形や余白、線の太さ、濁点・半濁点の見え方などを工夫し、誤読しにくい字形を目指しています。

近年では、行政の広報物や学校教材、企業の取扱説明書、医療系のサイトを中心に、UDフォントが標準書体として採用される動きが広がってきました。モリサワ、イワタ、SCREENグラフィックソリューションズ(ヒラギノ)といった主要フォントメーカーが、それぞれ独自の研究を重ねた書体を提供しています。

UDフォントの特徴とメリット・デメリット

普通のフォントとUDフォントの違いは?

一般的なフォントとUDフォントは、ぱっと見はよく似ていますが、読み手の感じ方はまったく異なります。違いを整理すると、視認性(Legibility)、判読性(Discernibility)、可読性(Readability)の3つの軸に集約できます。

視認性(Legibility)

普通のフォントとUDフォントの違いは?-視認性

視認性は、瞬間的な文字の見やすさのことです。たとえば、会議で配られた資料を読む場面を思い浮かべてみてください。一般的な明朝体では、文字が小さかったり、資料が縮小印刷されていたりすると、細い横線がかすれて見え、文字の輪郭を捉えにくくなることがあります。その点、UD明朝体では、横線にも適度な太さを持たせる等、明朝体らしい印象を保ちながら文字を認識しやすくする工夫が施されています。そのため、小さな文字でもストレスなく読み取れるようになります。

判読性(Discernibility)

普通のフォントとUDフォントの違いは?-判読性

判読性は、似た形の文字を誤読しない分かりやすさを指します。「ろ」と「る」、「ヲ」と「フ」、数字の「6」と「8」など、新幹線の揺れる車内で、取引先から届いた議事録のPDFを開いた瞬間に、こうした文字を一瞬で見分けられるでしょうか。UDフォントは、判読性を上げるため、文字の違いが分かりやすくなるよう設計されています。たとえば、「ろ」の終筆の払いを一般フォントより明確にしたり、濁点・半濁点を本体から少し離して打ったりといった調整がそれにあたります。

可読性(Readability)

普通のフォントとUDフォントの違いは?-可読性

可読性は、長文を読み続けたときの読みやすさを指します。週末、自宅のソファで来週の提案資料をじっくり読み込む夜。文字間や行間のバランスが悪いと、想像以上に疲労が溜まります。UDフォントは、文字ごとの太さや幅のばらつきを抑え、目線がスーッと次の行へ移っていけるリズム感を意識して作られています。

UDフォントを導入するとどんな効果がある?

UDフォントの導入により得られる大きな効果は、情報をより多くの人に正確に届けやすくなることです。文字が見づらいと、内容に関心があっても途中で読むのをやめてしまったり、重要な情報を見落としてしまったりする可能性があります。

こうした読みづらさを減らせる点で、UDフォントは読者層の取りこぼし防止に役立ちます。視力に不安のある高齢の方、小さな文字が読みづらい方、長時間スマホを見続けて目が疲れている方など、幅広い読み手にとって見やすいものをつくりやすくなる点がUDフォントの大きなメリットです。

また、問い合わせや申し込みなどの成果が高まる効果も期待できます。会社案内パンフレット、Webサイトのサービス紹介ページ、見積書。どれも読まれて初めて意味を持つ媒体です。読みにくくて途中で離脱した、伝えたいことを伝えきれなかったことによる機会損失を減らすために、UDフォントが役立ちます。

さらに、読み手に配慮した企業姿勢をアピールできる点も大きなメリットです。読みやすいWebサイトや資料は、「読み手のことを考えている会社だ」という印象を持たれやすくなります。採用候補者がコーポレートサイトを見たとき、入社後の顧客対応や社内文化を、こうした細部から感じ取っているケースは少なくありません。

UDフォントのデメリットは?ブランド表現との使い分け

ここまで読んで、「では全部UDフォントに切り替えればいいのでは?」と感じた方もいらっしゃるかもしれません。UDフォントの良い面ばかりを紹介してきましたが、UDフォントの最大のデメリットとして、ブランドの世界観や情緒的なニュアンスを表現しにくい点があります。

UDフォントは「読みやすさ」を重視して設計されているため、線の表情や字形のクセが意図的に抑えられています。結果として、温もりや上品さ、洗練さ、ラグジュアリーといった「空気感」を文字で語る力は、ブランド表現に適した書体に比べるとどうしても控えめになります。そのため、すべてをUDフォントに統一すればよい、というわけではありません。

たとえば、長年地域で信頼を積み重ねてきた税理士事務所のロゴをUDフォントで組んでしまうと、機能性は上がっても、重厚感や歴史の厚みは薄れてしまうかもしれません。創業100年の和菓子屋さんが、贈答品オンラインショップのフォントをすべてUDゴシックに統一したら、特別感や品格が伝わりにくくなる可能性があります。

実務において、UDフォントとブランドを表現するフォントの役割分担を明確にしておくと、デザイン性と読みやすさのバランスが取りやすくなります。具体的には、本文・ボタンラベル・フォームの入力欄・FAQ・操作説明など「情報を正確に伝えるべきパーツ」はUDフォント、ロゴ・キービジュアル・キャッチコピー・大見出しなど「ブランドの表情を担うパーツ」は、世界観を語れる専用書体に委ねるという方法です。UDフォントの力を最大限に引き出すには、「使う場所」をきちんと見極めることが鍵になります。

代表的なUDフォントと用途別の選び方

UDフォントの主要メーカーとおすすめの書体

日本で広く使われているUDフォントは、主要メーカーからそれぞれ特徴のあるシリーズが出ています。それぞれの「キャラクター」を押さえておくと、用途に合った書体を迷いなく選べるようになります。

モリサワ|BIZ UDPゴシック/BIZ UDP明朝/UD新ゴ/UD黎ミン

UDフォントの主要メーカーとおすすめの書体-モリサワ

大手フォントメーカーであるモリサワは、UDフォントの研究と開発を早くから手がけてきた会社のひとつです。なかでも「BIZ UDPゴシック」「BIZ UDP明朝」は、Word、Excel、PowerPointなどのMicrosoft Office製品で使いやすく設計されたUDフォントです。クセが少なく、汎用性が高いため、ビジネス文書全般やWebサイト本文に使いやすいのが特徴です。

Windows 10 October 2018 Update(バージョン1809)以降のWindowsにはOS標準で搭載されているため、Windows版のMicrosoft Office製品なら、追加導入なしでそのまま使えます。あわせてGoogle FontsでもSIL Open Font License 1.1のもと無料で配布されているため(いずれも Regular/Bold の2ウェイト、商用利用可)、Webサイトにも利用できます。Macには標準搭載されていないため、Mac中心の制作環境では別途インストールが必要になる点だけ押さえておく必要があります。

「UD新ゴ」は、モリサワの「新ゴ」をベースに、一文字ごとの形を判別しやすくしたゴシック体です。欧文や数字の見分けやすさにも配慮されており、案内表示やサイン、見出しなど、整然とした印象と分かりやすさを両立したい場面に適しています。

イワタ|イワタUDゴシック/イワタUD明朝

UDフォントの主要メーカーとおすすめの書体-イワタ

イワタのUDフォントは、パナソニック株式会社との共同開発によって生まれた書体で、医療・教育分野で長年使われてきた実績があります。安定した線の太さに定評があり、文字量の多い場面での「読み進めやすさ」はピカイチです。

「イワタUDゴシック」は、長文での読みやすさに配慮して設計されています。そのため、取扱説明書や公共施設の案内、業務マニュアル、医療・福祉関連の資料など、正確な情報伝達が求められる媒体で使いやすい書体です。「イワタUD明朝」は、小さな文字や横組みの文章でも読みやすさを保ちやすいフォントです。報告書や冊子、教育関連の読み物など、落ち着いた印象と読みやすさを両立したい場合に向いています。

SCREENグラフィックソリューションズ(SCREEN GA)|ヒラギノUD角ゴ シリーズ

UDフォントの主要メーカーとおすすめの書体-ヒラギノ

「ヒラギノUD角ゴ」シリーズは、MacやiOSに標準搭載されているヒラギノファミリーから派生して2009年にリリースされました。ヒラギノならではの端正な佇まいを残したまま、長文を「楽に読ませる」ことを目指して判読性を底上げした書体です。

上質な印象を保ちながら、可読性も担保したいブランドサイトにおすすめです。さらに線質をフラットに整えた「ヒラギノUD角ゴF」は、視認性が高いため、サイネージやUIなど画面表示用途で重宝します。

モリサワ(旧タイプバンク)|UDデジタル教科書体

UDフォントの主要メーカーとおすすめの書体-UDデジタル教科書体

特別支援学校や拡大教科書の制作現場へのヒアリングから生まれた書体で、ロービジョン(弱視)やディスレクシア(読み書きに困難を抱える方)を含む、すべての子どもに届く文字を目指して、約8年かけて開発されました(2016年発売、開発元は当時モリサワ子会社だったタイプバンク。2017年9月にモリサワへ吸収合併されています)。学習指導要領に準拠しており、一画一画の「とめ・はね・はらい」が分かりやすく、かつ読みやすさにも配慮されている点が特徴です。

Windows 10 Fall Creators Update(2017年)以降のWindowsにはOS標準で搭載されているため、Windows環境で資料を作成する現場でも導入しやすくなっています。学校教材や自治体・福祉施設の資料、子ども向けサービスのサイトと相性のよいフォントです。

主要UDフォント早見表

書体名 開発・提供元 特徴 主な想定用途 主な搭載・入手環境 ライセンス・費用
BIZ UDPゴシック/BIZ UDP明朝 モリサワ Microsoft Office製品で使いやすく設計されている。クセが少なく汎用性が高い。 ビジネス資料、Web本文 Windows 10 (1809) 以降にOS標準搭載/Google Fonts Google Fonts版:SIL Open Font License 1.1

Windows搭載版:Windowsの利用許諾に準拠

UD新ゴ/UD黎ミン モリサワ ゴシック体のすっきりとした見やすさと、明朝体の上品な印象を保ちながら、高い視認性・可読性を備えた定番UD書体。 コーポレートツール、印刷物 Morisawa Fonts/TypeSquareなど 有償。Morisawa Fontsのサブスクリプション、パッケージ・書体選択製品、Webフォントなど、利用方法によって契約が異なる
イワタUDゴシック/イワタUD明朝 イワタ 線の太さが安定しており、長文でも読み進めやすい。 医療・教育・長文取扱説明書 デスクトップライセンスによる購入/イワタLETSによる年間契約 有償
ヒラギノUD角ゴ シリーズ SCREENグラフィックソリューションズ Apple環境との親和性が高い。端正な佇まいを保ったまま、判読性を底上げした書体。 上質なブランドサイト、サイネージやUIなどの画面表示 SCREENのデスクトップライセンス/Morisawa Fonts/TypeSquareなど 有償
UDデジタル教科書体 モリサワ(旧タイプバンク) 学習指導要領の字形に準拠。一画一画の「とめ・はね・はらい」が分かりやすい。 学校・自治体・福祉施設、子ども向けサイト。 Windows 10 Fall Creators Update (2017) 以降にOS標準搭載 Windows標準同梱分は無料

【用途別】UDフォントの選び方

書体の違いがわかったところで、次は「自社のケースだとどれを選ぶべきか」という実務視点でお話しします。ここで紹介するのは、業種や読者層を問わない、ベースとなる組み合わせです。迷ったときの起点として手堅い選択肢から検討し、必要に応じて組み替えてください。

Webサイト本文に採用するなら

Webサイトの本文には、画面上で読みやすく、導入しやすい「BIZ UDPゴシック」がおすすめです。組み合わせとしては、見出し「Noto Sans JP」+本文「BIZ UDPゴシック」が適しています。

【用途別】UDフォントの選び方-Webサイト本文に採用するなら

本文を「BIZ UDPゴシック」にする理由は、以下3点です。

  1. Google Fonts で SIL Open Font License 1.1 のもと無料配布されており、ライセンスと読み込み速度の心配が少ない。
  2. Windows 10 (1809) 以降には OS 標準で搭載されているため、Windows版Word・Excel・PowerPointで原稿執筆者とデザイナーが同じ書体で原稿を確認できる。
  3. クセが少なく、コーポレートサイトから採用情報、IR、サービスサイトまで業種・用途を問わず馴染む。

なお、見出しに提案した「Noto Sans JP」は厳密にはUDフォントではありません。しかし、見出しのような大きく表示される用途であれば、可読性の問題は起きにくく、モダンな印象を作りやすい書体です。本文のUDフォントと組み合わせることで、デザイン性と読みやすさのバランスのとれたWebサイトになります。

士業、医療、教育、金融など、信頼感や落ち着いた印象を出したいWebサイトでは、本文に 「BIZ UDP明朝」を据える選択肢もあります。

【用途別】UDフォントの選び方-Webサイト本文に採用するなら

ビジネススライドに使うなら

「BIZ UDPゴシック」(Windows標準)がおすすめです。

Windows 10 (1809) 以降のWindows版Microsoft 365環境であれば、標準で利用できるため、社内資料や提案資料で使用しやすい書体といえます。社内の誰が編集してもフォントが置き換わる事故が起きにくい点もメリットです。ただし、Mac環境や社外の相手へ共有する場合は、同じフォントで表示されない可能性があるため、PDF化して配布するのがよいでしょう。

【用途別】UDフォントの選び方-ビジネススライドに使うなら

投影用のスライドの場合は、フォント選びだけでなく、文字サイズと行間も大切な要素です。本番に近い環境で、後方の席から一度スライドを眺めてみると、文字サイズと行間が適切か確認しやすくなります。

紙のパンフレット・会社案内なら

読み手の年齢層や、伝えたい印象に応じて、ゴシック系と明朝系を使い分けるのがおすすめです。

親しみやすさと整理された読みやすさを優先する場合は、見出しから本文まで「UD新ゴ」などのUDゴシック系で統一する組み方が手堅い選択肢になります。紙面に密度と落ち着きを持たせたい場合は、見出しに太い「UD新ゴ」を据え、本文は細いウェイトで整理すると、長文でも読み疲れません。

【用途別】UDフォントの選び方-紙のパンフレット・会社案内なら

一方で、企業としての品格や歴史性を前面に出したい場合は、本文を「UD黎ミン」などの明朝系で組み、見出しも同じ明朝系の太めウェイトで揃える(有償ライセンスの導入が難しい場合は「BIZ UDP明朝」でも代替可能)組み方が選択肢に入ります。

【用途別】UDフォントの選び方-紙のパンフレット・会社案内なら

ゴシック体の見出しと明朝体の本文を組み合わせる「対比の強さ(コントラスト)」を活かしたデザインも有効ですが、ヒトツナギ・デザインでは、同系統のフォントでウェイト差をつけてまとめる「リズム」を活かした設計を推奨しています。フォントの種類を増やしすぎないことで、全体に統一感が生まれ、読み手の視線が自然に文章へ流れる紙面に仕上がります。

教育・福祉関連の資料なら

「UDデジタル教科書体」がおすすめです。

【用途別】UDフォントの選び方-教育・福祉関連の資料なら

学校だより、地域包括センターの案内、保護者向けの説明資料に最適です。ひらがな・カタカナの字形が学習指導要領と整合しているため、お子さん、保護者の方、ご高齢の方の誰が読んでも違和感がありません。Windows 10 Fall Creators Update(2017年)以降のWindowsにはOS標準で搭載されているため、現場担当者が追加インストールに頭を悩ませる必要がないのもメリットです。

コラム|現場では「一律指定」ではなく「状況に応じた組み合わせ」で設計する

デザインの現場で書体を選ぶとき、すべての案件で「とりあえずこの書体」と一律に指定することはありません。プロジェクトの目的、ブランドが伝えたい世界観、想定される閲覧環境。その都度、最適な組み合わせを設計していきます。

たとえばブランドのクリーンで端正な世界観を前面に出したいコーポレートサイトでは、見出しから本文まで「Noto Sans JP」を主役に据える選択肢が有力です。一方で、個性や情緒を際立たせたい場面では、それに相応しいデザイン書体を選び込みます。

そのうえで、「表示パフォーマンス」と「Webアクセシビリティ」がとくに高く求められるプロジェクトでは、もう一段踏み込んだアプローチを採ることがあります。CSSのフォント指定でデバイスフォントを出し分け、Mac・iOS ユーザーには「ヒラギノUD角ゴ」、Windows ユーザーには OS 標準の「BIZ UDPゴシック」が、それぞれ自動的に適用されるよう組む方法です。

この組み方の強みは、重い Web フォントの読み込みを発生させないため、ページ表示時の遅延や、本文がフォント切替の瞬間にチラッと入れ替わる現象(FOIT/FOUT)が起きないこと。それでいて、どのデバイスで開いた読者にも、その OS にもっとも馴染んだ UD ゴシック体で読んでもらえます。「一瞬で表示される」と「誰にとっても読みやすい」を同時に成立させたい局面で、有力な引き出しの一つになります。

もちろん、これが万能解ではありません。ブランド独自の世界観を Webフォントで作り込みたい案件には向きませんし、Android 端末まで含めた完全な統一表示を目指すなら、別の答えになります。判断軸は常に「このプロジェクトでは何が最重要か」。書体選びは、その問いへの設計上の回答です。

UDフォントの効果をさらに引き出すデザインのポイント

UDフォントは、誰にでも読みやすいよう設計された書体ですが、それ単体ですべてを解決してくれるわけではありません。書体の力を最大限に引き出すには、行間、文字サイズ、色のコントラスト、表示環境など、文字の周りの「環境」を整える必要があります。

フォント以外のアクセシビリティを整える

Webサイトや資料を作成する際は、行間1.5〜1.7倍、コントラスト比4.5:1以上、本文の文字サイズ16px以上を目安にしましょう。この3つの数値は、UDフォントの読みやすさを活かすための土台となります。

行間は1.5〜1.7倍を目安にする

行間(CSSで言うline-height)は、フォントサイズの1.5〜1.7倍に設定すると、文字量の多いページでも読み進めやすくなります。行間が狭すぎると行同士が干渉して、次に読む行を見失いやすくなります。一方で、行間が広すぎると一つのまとまりとして認識しづらく、読み進めるリズムが途切れてしまいます。まずは、「line-height: 1.6;」を起点にし、フォントの種類や文字サイズ、文字量に合わせて調整するとよいでしょう。

コントラスト比は4.5:1以上を基準にする

文字色と背景色のコントラストが弱いと、UDフォントを使っていても可読性は下がってしまいます。WCAG(Web Content Accessibility Guidelines)では、本文テキストは背景に対して4.5:1以上のコントラスト比が推奨されています。淡いグレーの文字を白背景に乗せるおしゃれなデザインを見かけますが、年配の方や日中の屋外で見る方にとっては、文字が背景に溶けて読みにくくなります。

本文の文字サイズはWebサイト16px以上、資料10.5ptを目安に

Webサイトの本文は16px以上、紙資料の本文は10.5pt以上を基準にしましょう。ただし、読み手の年齢層や閲覧環境によって適切なサイズは変わります。高齢の方に向けた資料、説明量の多いパンフレット、注意事項を含む書類では、読み疲れや重要情報の見落としを防ぐため、少し大きめの文字サイズにするのがおすすめです。狭いスペースに文字を詰め込みたいときこそ、「この小さい字を、本当に読み手は読めるか」と一度立ち止まって考えることが大切です。

利用シーンを想定して見え方を検証する

UDフォントを採用したサイトや資料は、実際の利用シーンでテストしてみることを強くおすすめします。デザイナーのモニター上では読みやすく見えても、実環境では印象が大きく変わるからです。

たとえば、以下のようなシーンが想定できます。

  • 屋外でのスマートフォン表示: 晴れた日の屋外で自社サイトを開くと、室内では十分に見えた淡いグレーの文字が、光に負けて一気に薄く感じられます。コーポレートサイトや採用サイト、店舗案内ページなど、移動中に見られる可能性があるページでは、スマートフォンで見え方を確認しましょう。
  • 暗い会議室でのプロジェクター投影: 照明を落とした会議室で投影すると、PC画面では鮮明に見えていた文字が潰れて読めなくなることがあります。後方の席に座るお客様の視点でスライドを眺めるだけで、文字サイズや行間、コントラストが適切かどうかを判断しやすくなります。

UDフォントに関するよくある質問(FAQ)

Q. UDフォントとアクセシビリティ対応は同じものですか?

厳密には別物です。UDフォントはアクセシビリティ対応の「一要素」にすぎません。Webサイト全体のアクセシビリティを確保するには、文字色と背景色のコントラスト比、画像の代替テキスト(alt属性)、見出しの階層構造、キーボード操作への対応、色だけに頼らない情報伝達など、複数の要素を組み合わせる必要があります。その中で、UDフォントの導入は、文字の読みやすさや誤読のしにくさを高めるために取り入れやすい施策です。

Q. UDフォントの導入はSEOにも効果がありますか?

UDフォントの導入そのものが、直接検索順位を上げるわけではありません。ただし、読みやすいフォントを使うことで、ユーザーがページの内容を理解しやすくなり、離脱の防止や問い合わせ・申し込みなどの行動につながりやすくなる可能性があります。

Googleは、検索順位を決める際にページエクスペリエンスも考慮しています。ただし、フォントの種類やアクセシビリティ対応の有無が単独で順位を押し上げるというより、モバイルでの見やすさ、表示速度、コンテンツの分かりやすさなどを含めて、ユーザー体験を高めることが重要です。

Q. 普通のフォントに比べて、全体的な読みやすさは本当に担保されますか?

すべてのケースで普通のフォントを上回ると断言できるものではありません。ただ、視力に不安のある方、画面や照明環境が悪い場面においては、UDフォントの効果を感じやすくなります。フォントメーカー各社が公表している被験者調査(参考:UD書体の実験・研究(エビデンス)|モリサワ)でも、UDフォントは特定の文字(数字、英字、濁点を含むひらがな等)の読み間違いを減らす効果が示されています。幅広いシーンを想定するなら、UDフォントの使用を検討してみてください。

Q. 無料で商用利用できるおすすめのUDフォントはありますか?

はい。代表的な無料のUDフォントは、Google Fontsで配布されている「BIZ UDPゴシック」「BIZ UDP明朝」です。Windows 10 (1809) 以降のOS標準フォントとしても搭載されているため、Windows版のOffice製品で資料をつくる場合、追加インストールなしでそのまま使えます。

なお、「無料」「商用利用可」のフォントでも、利用条件は配布元やライセンスによって異なります。Webサイト、印刷物、ロゴ、アプリなど、使用する媒体によって扱いが変わる場合もあるため、本番運用前には必ず利用規約を確認しましょう。

Q. 企業のロゴマークにUDフォントを使っても問題ないですか?

機能的には問題ありませんが、デザインとライセンスの観点からは慎重な判断が必要です。ロゴは企業の世界観を最も濃く表現する要素であり、読みやすさよりも「自社ならではの人となり」を伝える役割が優先されます。UDフォントは可読性を重視して設計されているため、独自の表情を出しにくく、結果として競合他社と似た印象になりがちです。ロゴには専用書体やオリジナルの文字で独自性を、本文にはUDフォントで確実な可読性を。この役割分担が、ブランドの世界観と伝わりやすさを両立させる効果的な設計です。

この記事の要点(チェックリスト)

  1. UDフォントは「読み手の事情を選ばないこと」を最優先に設計された書体。視認性・判読性・可読性を高める工夫が施されている。
  2. 2024年4月の障害者差別解消法改正で、すべての事業者に合理的配慮の提供が義務化された。UDフォント導入は、情報を読みやすく届けるために取り組みやすい施策の一つ。
  3. 用途別に見ると、Web本文にはBIZ UDPゴシック、スライドにはBIZ UDPゴシック、紙パンフレットにはUD新ゴまたはUD黎ミン、教育・福祉関連資料にはUDデジタル教科書体が起点になる。
  4. UDフォントは万能ではない。本文やボタン、フォームなど情報を正確に伝える部分にはUDフォントを使用し、ロゴ・キービジュアル・キャッチコピーなど「ブランドの表情を担うパーツ」にはイメージに適したフォントを使うなど、使い分けが大切。
  5. 行間1.5〜1.7倍、コントラスト比4.5:1以上、Webサイト本文 16px以上、紙資料本文10.5pt以上を目安にすると、UDフォント本来の効果が引き出される。

まとめ|デザインの本質は「届く」までを設計すること

UDフォントは、「すべての読み手に同じ温度で情報を届けたい」という設計者の願いから生まれた書体です。視力、色覚、環境、年齢。読む側の事情はひとりひとり違います。その違いをデザインの段階で吸収できるのが、UDフォントが持つ最大の力です。

ただし、UDフォントを入れさえすればすべてが解決するわけではありません。行間、コントラスト、文字サイズ、ブランド表現とのバランス、サイト全体のアクセシビリティ設計、社内ドキュメントの統一ルール。これらを丁寧に組み立てて初めて、書体は本来の役割を果たします。

そして冒頭でも触れたとおり、デザインの本質は「格好いいかどうか」ではなく「届くかどうか」にあります。届かないデザインは、どれだけ手間ひまをかけても、ビジネスの観点では存在しないのと同じです。一方、誰にとっても届くデザインは、それだけで企業の誠実さと信頼性を、言葉以上に伝え続けてくれます。

2024年4月の法改正をきっかけに、社内でもアクセシビリティについて議論が始まった、という会社は少なくありません。けれど、いざ自社サイトや会社案内、社内資料の見直しに着手しようとすると、判断軸が多すぎて立ち止まってしまう、という声もよく耳にします。書体ひとつ取っても、コーポレートサイト、採用ページ、IR資料、社内マニュアル、SNS投稿画像と、整える対象は思いのほか広く、横串で考えるほど奥行きが出てきます。

まずはご自身のサイトや会社案内パンフレットを、年配のご家族や友人に一度見てもらうところから始めてみてはいかがでしょうか。

UDフォントの導入を入り口に、コーポレートサイトのアクセシビリティ点検、会社案内・サービス資料のリニューアル、社内のデザインガイドライン整備まで踏み込みたい場面では、第三者の目をはさむのもひとつの選択肢です。

ヒトツナギ・デザインでは、デザインの現状整理だけのご相談も無料でお受けしています。「うちのサイト、どこから手をつけたらいいか分からない」「会社案内をUD対応で刷新したいが、ブランドの世界観を保てるか不安」「社内資料の書体ルールを作りたい」。そうしたお悩みの段階で、お気軽にご相談ください。

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株式会社ヒトツナギ・デザインは、埼玉県川口市を拠点に、ホームページ・LP制作、グラフィックデザイン制作、Webマーケティング支援、公開後の保守・運用まで幅広く手がけるデザイン会社です。「繋がるよろこび」を理念に、デザインの力で人と人、企業と顧客を結び、新しい価値を生み出すことを目指しています。

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RYO YOSHIDA

CEO / Designer

RYO YOSHIDA

ヒトツナギ・デザイン代表取締役。デザイナーとして制作現場に立ち、2015年の創業以来、ホームページ制作・ブランディング・Webマーケティング支援に携わっています。制作はゴールではなく起点。つくったその先で、お客さまの事業とその先にいる人がどう繋がるかまで考えています。

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